西原理恵子「毎日かあさん」に思う事

働く母の希望だった西原理恵子の炎上について
川崎貴子 2022.06.08
誰でも

{今回はカウンセリングルームではなく、思う事を書きました}

西原理恵子が炎上している。

昔から彼女の「毎日かあさん」を愛読してきた私にとって、彼女は「言いたい事を言っているのに炎上しない」稀有な女性で、その独特なポジションすら尊敬していた所がある。だから、今回の炎上騒動に先ず驚いた。そして、初めて目にした娘さんのブログには「子供の頃からあること無い事書かれて傷ついていた」と、書かれていて、子供が小さい頃子育てブログを書いていた私だけじゃなく、現役子育てブロガーさん達も同じようにどきっとしたのではないだろうか?

次に、その発端となった娘さんのブログを更に読み進めて戦慄した。

母から娘に発したとされる言葉や娘への待遇があまりにも無慈悲で、これには毒親を持つ多くの女性達によりSNSで「私の母とそっくり」「弱者や女性の味方だと思っていたのにがっかり」というコメントと共に拡散されたのだが、現役母達の動揺や非難も数多く見て取れた。例え一方的な「娘からの告発」でも、20歳を過ぎた娘がそれを書いて公表したというだけで実母への何かしらのメッセージであり、子育ての「答え合わせ」的要素を過分に含んでいる。だから、「毎日かあさん」読者だった母達は、

「西原式子育て、参考にしたらあかんやつだった」

と、取り返しがつかない何かを目の当たりにしているような、嫌な汗がしたたるような、そんな不快さから逃げたくて非難コメントをしている人が、実は多いのではないだろうか?

私が読み始めた18年前当時は、他に目立った子育て漫画も無く、働くお母さんのモデルケースも今よりずっとずっと少なかった。

だから、「毎日かあさん」は、私を含め多くの働く女性に、「働きながら子供を産み育てる」という勇気を一人勝ちで与えていたように思う。

完璧な子育てなんてない、破天荒でも子は育つ、手を抜くところは抜く、自分主義で子供と一緒にいる、母親の働く(戦う)姿を見せる・・・。

著者が同作品で発したメッセージ達は、当時、「仕事を取るか家庭を取るか」で悩んでいた女性達に「私にも両方できるかもしれない」という希望を確実に与えてきたと思う。

でもそれは、あくまで「毎日かあさん」に出てくる子供たちが、「リアルでも健やかに育っている」というのが、勝手ながら読者の大前提だった。

親子喧嘩や反抗期は当然あったものの、子供達が大人として歩いていく姿を見送れるぐらいに「子育てのあがり」があり、だから「卒母」して、だから「YES!高須クリニック」だったのだろうと、読者達はこれまた勝手に安堵し、読み続けてきたんだろうと思う。

ところが、娘さんのブログを読むと、彼女の受けた傷はあまりにも深く、過去ではなく今も傷ついていて、読む者に「どうか周囲に助けてくれる優しい大人がいますように」と思わせるレベルだ。

アルコール中毒で暴れてた亡き父を美化して慕う姿にも、親の愛情に飢えている子供そのものに見える。

だから、「これが子育てのあがりなのか?」に、私達は先ず面食らったんだと思う。

私達は当時、産んだ後だってずっと怖かった。

働いているお母さんだから子供が愛情不足にならないだろうか? 専業主婦の母のようにできない私はダメな母なのではないか?子育てばかりに時間を使ったらキャリアを失くしてしまうのではないか?

そんな私達に「大丈夫」と言い続けてくれたのが「毎日かあさん」という作品だった。勿論、全て実話だなんて思っていないし、全てを参考にしていたわけではない。本作は創作も多いだろうし、深刻にならないよう笑いに変えている事もいっぱいあるだろうと思ってみんな読んでいた。

そして、著者は、誰よりも私達の不安を一番よくわかっていて物語を紡いでいたのではないかと思うのだ。

「本当は子育て不安―!」という読者に対して、「平気だよ―!」を著者が返すという、「毎日かあさん」はそんな著者と読者のコールアンドレスポンスで作られ続けてしまった作品のように、今思えてならない。

ただ、著者は解らないが、読者という参加者全員が、そこに「娘さん」という被害者を作ってしまっているとは思わないでいた。だから、SNS上でも、同作品を好きだったママ達は「読者として読んでいただけなのに」加害者意識を孕んだツイートをしたりしていて私もそれには大いに共感してしまう。

確かに、子育てに正解は無いし、子育ては難しい。親子の相性だってあるし、時代によって常識も変わる。

ただ、今回の炎上を通じて、著者はまた私達に、今度は反面教師で人生を教えてくれているように思う。

少なくとも私は、母の業も、仕事人の業も、女の業も多かれ少なかれ持ち合わせてこの後も生きていくとして、人より過剰だから尚更、何とか上手くコントロールしてゆきたいと思っている。そして、愛する者、特に子供達だけは、その業の被害者にしてはならない、と、今回の騒動で改めて自分に戒めた。

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最近の私

私のTiktokプロデューサー&撮影&編集は長女なのですが、先日「化粧が薄い!」「化粧が古い!」とクレームが入りました。

確かに他の人の投稿を見ると、皆、目が大きくキラキラしており、長女の指導を受けることに相成りました。

先ずはアイシャドウにラメを結構な量乗せてくるので、乗せ過ぎじゃね?と反論するも、

「ママ、大丈夫。ラメは人類を救う」

と、ご教示いただきました。

また、今時アイラインの長く引くのをためらっていると、

「ママ、アイラインは100Mでも引いていい」

と、諭されたのでした。

冬でもおむつ一丁で過ごしていた長女の赤ちゃん時期を懐かしく思い出しながら、

人生は面白いと思う母なのでした。

プロフィール

1972年生まれ。埼玉県出身。リントス株式会社代表取締役。1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性社員向けコンサルティング事業を展開。

著書に「やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本」「我がおっぱいに未練なし」「結婚したい女子の為のハンティング・レッスン」「私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由」「愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる」「上司の頭はまる見え。」「モテと非モテの境界線」がある。

株式会社ninoya、ベランダ株式会社の取締役を兼任し、2016年11月より、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。

女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は2万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。17歳と10歳の娘を持つワーキングマザーでもある。

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